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<医療コラム> 海外在住赤ちゃんは話し始めが遅い?

< LOTUS CLINIC 医療コラム >

***** 海外在住赤ちゃんは話し始めが遅い? *****

佐野 夏帆  医師

 

早いもので私もHCMでの勤務が4年目になりました。

クリニックで乳幼児健診をさせて頂いていますが、「まだ話さない」「話し始めが遅い」とのお声をよく伺います。今回は海外に住む子供の言語発達について、経験談も交えて書かせて頂こうと思います。

父親と母親の母国語が違う子供をバイリンガルとよく呼んでいますが、バイリンガルの子は話し始めが遅いと言われています。2つの言語を頭の中で整理して話せるようになるのは、少し時間がかかるようです。

一方で、アメリカ言語学会のバイリンガルについて著書によると、両親の母国語は一緒だけれど違う言語の国に住んでいるような状況(両親は日本人でアメリカに在住など)をバイリンガル環境と呼んでいるようです。そして、こういったケースもやはり言語の出るのが遅くなるようです。

こちらは私達に当てはまりそうですね。ベトナムは英語圏ではありませんので、両親は日本人、ベトナム在住、更に普段の買い物やコミュニケーションで英語(学校もインター校など)となるとトリリンガル環境とでも呼ぶのでしょうか。

 

さて実際に私自身の子供達4人を比較検証してみます。

ベースに4人とも生後1~3ヶ月で日本の保育園に通園を始めています。また参考で一般的な言語発達の平均は1歳でママ、パパなどの単語、2歳でママ行く、これいるなどの2語文と言われています(個人差はあります)。

第1子:早くから保育園で言葉のシャワーを浴びていたせいか、上記の平均よりやや早く話し始めました。

第2子:早い保育園と上の子の影響、そして女の子のせいか非常に早く話し始め、2歳で「~だから~しよう」など2文話していました。(思えば昔から口が達者だったのですね)

第3子:第2子同様非常に早く話し始め、ママより先にアンパンマンという難しい単語を言えていた記憶があります。

そして今回のテーマは第4子です。上の子達が新生児で入った保育園が満員で入れず、なんとか見つけた認可外保育施設が中国人経営、先生も半分が中国人でしたので、新生児期より日本語・中国語のバイリンガル環境に。生後半年で渡越し英語(・ベトナム語)の学校に転園、メイドさんも英語・ベトナム語、家族は日本語のトリリンガル環境で育ちました。その影響か、やはり上の子達より、また上記の平均よりも話し始めがゆっくりで、出てくるようになった単語も状況でいろんな言語でした。

2歳になってもあまり喋っていなかった第4子ですが、転機が訪れたのが、記憶に新しいコロナ休校です。ベトナム全土で休校がテトも合わせ3ヶ月弱続きました。その間は多少メイドさんとのやり取りもありますが、圧倒的に兄姉たちと日本語のみのモノリンガル環境で生活した結果、メキメキと日本語が伸び、休校明けには日本語がペラペラになっていました。

今回母数がたった4人なので、参考程度ではありますが、やはり言語発達に環境因子は強いようです。簡単に日本に帰れずこちらで出産・育児をしている方も多いと思いますが、言葉がなかなか出ないなぁと心配している方、ゆっくり見守ってあげてください。

ただし、発育上の何らかの問題で言語が出ないなどがあると困りますので、乳幼児健診もしっかり受けて頂くことをお勧めします。