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<医療コラム> 風邪による咳に効く薬はない!?

< LOTUS CLINIC 医療コラム >

***** 風邪による咳に効く薬はない!? *****

滝 沢 美 代 子 医師

風邪をひくと、咳だけでなく、喉が痛くなったり、くしゃみ、鼻水、微熱が出たりしますが、風邪による咳はつらく、クリニックに来る患者さんの症状の中でも最も多い訴えの一つです。
今回、「Chest」というアメリカの有名な呼吸器学会の雑誌に「風邪による咳症状」について興味深い文献を見つけたのでご紹介したいと思います。

市販薬から処方薬まで、さまざまな咳止めの薬から、米国で「風邪に効く」とされているチキンスープ、のど飴、鼻洗浄といった民間療法まで、あらゆる治療法に関して米国呼吸器学会(ACCP)の専門家委員会が、今までのたくさんの研究を分析研究をしたところ、「風邪による咳に効く」という証拠(エビデンス)がある治療法は一つもありませんでした。
この分析研究の結果、風邪薬に使われている、抗ヒスタミン薬や鎮痛薬、鼻粘膜の充血を緩和する成分が含まれる風邪薬や、ナプロキセンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の試験データの分析からも、これらの薬が効くという証拠はないことががわかりました。

では、つらい咳はどうすればよいのでしょうか。この研究をまとめたMalesker氏らによると、1歳以上の小児に対しては蜂蜜にある程度の効果があるそうですが、その蜂蜜も、咳止めのデキストロメトルファン(メジコン)よりは効果は少ないとされています。
しかし、1歳未満の小児に蜂蜜はボツリヌス感染のリスクがあり、また、2歳未満の小児にはデキストロメトルファンは、副作用が出やすいことがあり、勧められていません。

また、成人の咳には亜鉛トローチが少し効くかもしれないという分析研究の結果がありますが、使用を推奨するには証拠が不十分で、亜鉛には副作用もあるため注意が必要だとしています。このほか、チキンスープや鼻洗浄、咳止め飴、胸に塗る薬といった民間療法についても効果があるという証拠は得られませんでした。

ただし、「お気に入りの飴やスープを飲んで気分が良くなるなら、そうするべき。」ですし、また、市販の風邪薬を試す場合、医師や薬剤師に相談することが望ましく、特に2歳未満の小児に薬を飲ませる場合にはかかりつけ医に相談すべきだとしています。さらに、市販されている風邪薬には眠気などの副作用があることに加え、咳止めのシロップに含まれていることの多いデキストロメトルファン、抗ヒスタミン薬のプロメタジンには乱用リスクがある点についても注意を促しています。

なお、咳と発熱が続く場合には肺炎や結核が、咳が長引く場合は軽度の喘息や慢性副鼻腔炎、肺癌、逆流性食道炎などの疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診した方が良いでしょう。

 

ケアネットより引用; 原著論文

Pharmacologic and Nonpharmacologic Treatment for Acute Cough Associated With the Common Cold: CHEST Expert Panel Report.
Malesker MA, et al. Chest. 2017; 152: 1021-1037.