ロータスクリニックからのお知らせ

<医療コラム> 片頭痛のお話

< LOTUS CLINIC 医療コラム >

***** 片頭痛のお話 *****

北 村 泰 佑 医師

 

こんにちは。4月よりロータスクリニック・ホーチミン院で診療を開始いたしました北村と申します。異国の地での健康に関する不安に、少しでも寄り添える診療ができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、こちらホーチミンは本格的に雨季に入りました。熱帯地域特有の“恵みの雨”の迫力を感じながら私はこの季節を楽しんでいるのですが、ふと最近、持病である片頭痛の発作頻度が増えていることに気づきました。これはベトナムの気候と関係しているのでしょうか…… 。

 

そこで今回は片頭痛について情報をシェアしたいと思います。

片頭痛は発作的に生じる片側または両側性の拍動性頭痛で、吐き気や嘔吐を伴い、光・音・においに過敏になるのが特徴です。動くと悪化するため、仕事や家事、育児など日常生活に大きな支障をきたすことがあります。また、精神面への影響も懸念されており、片頭痛はうつとの共存率が高いことも報告されています。

 

精神的要因 ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠の過不足
内因性因子 月経周期
環境因子 天候の変化、温度差、におい、音、光
ライフスタイル因子 運動、欠食、性的活動、旅行
食事性因子 空腹、脱水、アルコール、特定の食品

 

片頭痛には表に記したような様々な増悪・誘発因子が知られています。この中に、「天候の変化」「温度差」といった、まさにベトナムの雨季に関連しそうな項目がありますね。

気圧の変動や高湿度、降雨などが頭痛の発症数の増加と関連しているという報告はありますが、実はその明確な関連性や科学的なメカニズムは証明されていません。しかしながら、診療の現場や私自身の体験からもその関連性を実感することが多々あります。頭痛と天候の関連性を証明しづらい要因として、発作の誘因には個人差があること、一人の患者さんの中でも複数の要因が絡み合っていることが多いことが挙げられます。

ベトナム生活においては気候以外にも、慣れない環境によるストレス、疲労、強い日差し、旅行など、日本での生活以上に複数の誘因が重なりやすい傾向にありそうです。

天候は自分の力では変えられませんが、雨季の間はとくにこうした他の誘因をできる限り避けることが大切です。具体的には、睡眠リズムを整える、十分な休息をとる、食事を抜かない、水分補給をする、アルコール多飲を控えるなどに留意していただくと良いです。

前述しましたように、片頭痛の症状はとてもつらく、日常生活への支障度が非常に高い疾患でありながら、大半の方が医療機関を受診せず、市販薬を服用しながら我慢強く生活されています。

ご自身でコントロールされている方の中には、薬剤選択や薬の服用タイミングが適切でないために症状の管理が十分でなかったり、鎮痛薬の飲み過ぎにより逆に頭痛が増悪している方もおられます。少しでもお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

<参考文献>

Weather and Migraine. American Migraine Foundation. 頭痛の診療ガイドライン2021.

七夕飾り

七夕の季節です。

ロータスクリニックでは、受付に今年も七夕の飾り付けをしました!

みなさまに少しでも日本を感じて頂こうと、毎年 七夕の飾り付けをしています。

願い事を書くための短冊もご用意しておりますので、ぜひ願い事を書いて下さいね。

お気軽にお立ち寄り下さい!

<医療コラム> ビタミンDの驚くべき力と、日本人に多い“隠れ欠乏”

< LOTUS CLINIC 医療コラム >

***** ビタミンDの驚くべき力と、日本人に多い“隠れ欠乏” *****

松 本 真 悟 医師

 

今年2月からロータスクリニックに着任いたしました、医師の松本真悟です。一般内科、小児科から胃カメラ、超音波検査まで対応しております。皆様何卒よろしくお願い申し上げます。

 

今回は、ビタミンDのお話をしてみようと思います。

ビタミンDといえば、まず「骨を丈夫にする栄養素」というイメージが思い浮かぶ方が多いかもしれません。実際、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の形成・維持に欠かせない存在です。しかし、近年の研究では、それだけでなく免疫調整作用や精神面への影響、さらには生活習慣病予防にも関わることが分かってきています。

まず注目されるのは、感染症に対する抵抗力を高める働きです。ビタミンDは免疫細胞に作用し、ウイルスや細菌に対する防御機構を活性化させると同時に、過剰な炎症反応を抑えることで、自己免疫疾患のリスクも低下させる可能性があります。新型コロナウイルス感染症においても、ビタミンDの血中濃度と重症化リスクとの関連が報告されています。

 

また、ビタミンDは脳内のセロトニン合成に関与しており、メンタルの安定にも関わるとされます。ビタミンD不足がうつ症状の一因となっている可能性が指摘されており、特に冬季うつ(季節性情動障害)との関連が研究されています。

さらに、糖尿病、心血管疾患、がんなどの慢性疾患の予防におけるビタミンDの役割についても研究が進んでいます。とくに2型糖尿病との関係では、血中ビタミンD濃度が高い群で発症リスクが低いという報告もあります。

しかしながら、こうした重要な役割を果たすビタミンDにもかかわらず、日本人の多くが慢性的に不足しているとされています。東京慈恵会医科大学の2020年の調査によると、日本人の健常な成人の実に98%がビタミンD基準値を下回っていることが示されています。

Lotusクリニックでは、血液検査によりビタミンD(25(OH)D)の血中濃度を測定することが可能です。必要な補充量やサプリメントの活用についても、個々の状態に合わせて医師がアドバイスいたします。

骨の健康はもちろん、感染症や生活習慣病から身を守るためにも、ぜひ一度、ご自身のビタミンDレベルをチェックしてみてください。

【参考文献】
① Aranow C. Vitamin D and the immune system. J Investig Med. 2011 Aug;59(6):881–6.
② Meltzer DO et al. Association of Vitamin D Status and Other Clinical Characteristics With COVID-19 Test Results. JAMA Netw Open. 2020 Sep;3(9):e2019722.
③ Parker GB et al. Vitamin D and depression. J Affect Disord. 2017;208:56–61.
④ Song Y et al. Vitamin D and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective studies. Diabetes Care. 2013 May;36(5):1422–8.
⑤Miyamoto, Hiroyasu et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition, Volume 153, Issue 4, 1253 – 1264