<医療コラム> 腸内細菌(フローラ)について
< LOTUS CLINIC 医療コラム >
***** 腸内細菌(フローラ)について *****
長 谷 尚 子 医師
腸内にすむ菌(腸内細菌)は、数百種類に分かれ、約100兆個いるといわれています。
消化液が多い胃や十二指腸では菌は1gあたり1万個以下、小腸では1gあたり1000万個程度の菌がいると言われています。大腸内に住む細菌は1g当たり1兆個近い菌数といわれており、大腸内の内容物は600g~1㎏なので、600兆~1,000兆個近い細菌がいるということになり、大腸にくっついている細菌を全部集めると1kg以上あると言われています。
一般に大腸の菌は、俗称で、整腸作用などヒトにとって有用な働きをする乳酸菌やビフィズス菌を「善玉菌」、病気や食中毒の原因となる細菌であるウエルシュ菌や一部のサルモネラ菌、大腸菌毒性株、バクテロイデス菌毒性株などを「悪玉菌」、大腸菌無害株、バクテロイデス無害株など、体が弱ると悪さをする腸内細菌を「日和見菌」と呼んでいます。これらの菌たちはお互いに関係を保ちながら、腸内フローラを形成して腸管免疫と深く結びついています。
最近この腸内フローラが肥満、痴呆症、精神疾患、アトピーなどのアレルギー疾患にかかわっている可能性がわかってきました。
健康な状態なら腸内フローラは大きく変動しませんが、年をとるとそのバランスは徐々に変化し、60代以降は有用菌(善玉菌)の代表であるビフィズス菌が減り、有害菌(悪玉菌)が増えてきます。加齢だけでなく、偏った食事やストレス、抗生物質の使用などによっても腸内フローラはバランスを崩してしまいます。
ではこの腸内フローラを良い状態に保つためには何をしたらいいのでしょうか?
1.色々な食品を食べましょう。
食事が偏ると、腸内細菌のエサが偏る要因になります。偏った食事によって似たような種類の菌しか育たなくなることで、多様性が失われるといわれています。週に20品目以上食べる週間がある児童は宿題のスピードが早いというデータもあります。おなかだけでなく頭の回転にも効果があればうれしいですね。
2.繊維が豊富な大麦や海藻、野菜を積極的に摂りましょう。
糖質を気にして肉ばかり食べていると、腸内フローラが乱れる要因になります(ガスのにおいでなんとなくわかるかも、、)。善玉菌のエサになる食物繊維が豊富な大麦や海藻、野菜を積極的に摂るように心がけましょう。
3.お酒を飲むなら、ビール500mlかワイン2杯程度まで。
アルコールの摂り過ぎは、毒素を作る有害菌(悪玉菌)を増やすおそれがあり、1日の適量は、ビールなら中瓶1本(500ml)、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度といわれています。アルコールの適度な摂取は胃酸の分泌を促し、消化の促進につながります。また、肝臓にも負担がかからない飲み方です。
4.歩くときは早足で。少し息が上がるくらいの運動を習慣化する。
運動には腸内の有用菌(善玉菌)を増やす効果があるといわれています。1日30分、少し息が上がるくらいの運動(だいたい心拍数120/分くらい)を続けたり、週に3日程度ランニングやサイクリングなどの有酸素運動をしたりするのがオススメです。 このような運動を継続すると大腸のポリープが減るというデータもあります。
5.寝る前のスマホをやめて、十分な睡眠をとる。
睡眠不足によって腸内フローラが乱れてしまうおそれがあることも報告されています。少なくとも就寝前30分はデバイスを見ないようにしてみてください。
以上、健康に良いといわれていることばかりなので特別何かするわけではないのですが、ぜひ習慣にしていただき、オナカの健康を保ちましょう。