ロータスクリニックからのお知らせ

<医療コラム> ビタミンDの驚くべき力と、日本人に多い“隠れ欠乏”

< LOTUS CLINIC 医療コラム >

***** ビタミンDの驚くべき力と、日本人に多い“隠れ欠乏” *****

松 本 真 悟 医師

 

今年2月からロータスクリニックに着任いたしました、医師の松本真悟です。一般内科、小児科から胃カメラ、超音波検査まで対応しております。皆様何卒よろしくお願い申し上げます。

 

今回は、ビタミンDのお話をしてみようと思います。

ビタミンDといえば、まず「骨を丈夫にする栄養素」というイメージが思い浮かぶ方が多いかもしれません。実際、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の形成・維持に欠かせない存在です。しかし、近年の研究では、それだけでなく免疫調整作用や精神面への影響、さらには生活習慣病予防にも関わることが分かってきています。

まず注目されるのは、感染症に対する抵抗力を高める働きです。ビタミンDは免疫細胞に作用し、ウイルスや細菌に対する防御機構を活性化させると同時に、過剰な炎症反応を抑えることで、自己免疫疾患のリスクも低下させる可能性があります。新型コロナウイルス感染症においても、ビタミンDの血中濃度と重症化リスクとの関連が報告されています。

 

また、ビタミンDは脳内のセロトニン合成に関与しており、メンタルの安定にも関わるとされます。ビタミンD不足がうつ症状の一因となっている可能性が指摘されており、特に冬季うつ(季節性情動障害)との関連が研究されています。

さらに、糖尿病、心血管疾患、がんなどの慢性疾患の予防におけるビタミンDの役割についても研究が進んでいます。とくに2型糖尿病との関係では、血中ビタミンD濃度が高い群で発症リスクが低いという報告もあります。

しかしながら、こうした重要な役割を果たすビタミンDにもかかわらず、日本人の多くが慢性的に不足しているとされています。東京慈恵会医科大学の2020年の調査によると、日本人の健常な成人の実に98%がビタミンD基準値を下回っていることが示されています。

Lotusクリニックでは、血液検査によりビタミンD(25(OH)D)の血中濃度を測定することが可能です。必要な補充量やサプリメントの活用についても、個々の状態に合わせて医師がアドバイスいたします。

骨の健康はもちろん、感染症や生活習慣病から身を守るためにも、ぜひ一度、ご自身のビタミンDレベルをチェックしてみてください。

【参考文献】
① Aranow C. Vitamin D and the immune system. J Investig Med. 2011 Aug;59(6):881–6.
② Meltzer DO et al. Association of Vitamin D Status and Other Clinical Characteristics With COVID-19 Test Results. JAMA Netw Open. 2020 Sep;3(9):e2019722.
③ Parker GB et al. Vitamin D and depression. J Affect Disord. 2017;208:56–61.
④ Song Y et al. Vitamin D and risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of prospective studies. Diabetes Care. 2013 May;36(5):1422–8.
⑤Miyamoto, Hiroyasu et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition, Volume 153, Issue 4, 1253 – 1264